Natale con i tuoi, Pasqua con chi vuoi
クリスマスは親と、復活祭はお好きなひとと
クリスマスはキリスト教文化の伝統行事。親の家に親戚一同が集まる。一方、復活祭は春の祭り。各々自由に旅行や遠足に出かけ、春の空気を楽しむ。
Pietro Migliorini著 「Il grande libro dei proverbi」を参考
日本に住んでいるとつい忘れてしまうが、今日は復活祭。キリスト教では最も重要とされている祭日で、イタリアではパスクア(Pasqua)という。
パスクアの次の月曜はLunedì dell’angelo(天使の月曜)でイタリアは祭日。前日の金曜日はVenerdì santo(聖金曜日)で、企業によっては半休になる。学校も数日間休みになるため、復活祭の時期はイタリアでは行楽のシーズンだ。
冒頭のことわざでご紹介したように、同じ大きな祭日でも、クリスマスはイタリアでは親や親戚の家で過ごす。結婚後はどちらの親の家でクリスマスをするかを夫婦で揉めるほどしがらみがあって、好き勝手はできない。
一方、復活祭はことわざにあるように、お好きなひととご自由に、である。それも、季節はあらゆるものが芽吹く春…。
ミモザ、ひなげし、水仙といった花々が次々に咲き、日もだんだん長くなってくる。長い寒い冬のあと、ああ、ようやく春が来たと、みんなうきうきと野に山にくり出す。あたたかい地方では早々と海に行く人もいるし、ちょっと長めに休みをとり、海外旅行に出かける人も。
そういえば金曜日、渋谷を歩いていたら、外国人が多くてびっくりした。円安にも後押しされ、欧州から復活祭の休みで来ている人も多いだろう。長かったコロナの外出制限が終わり、季節もよく、待ちに待った海外旅行を満喫している。そんな感じがうかがえた。
わたしもイタリアに住んでいたころは復活祭の休みに方々出かけた。なかでも印象深いのが、ヴェネツィアの近郊の町、バッサーノ・デル・グラッパの思い出だ。
バッサーノで、名産の白アスパラガスとゆで卵を死ぬほど食べた。あんなに大量に白アスパラガスと卵を食べたのは、あとにも先にもあのときだけだ。それが愉快で、忘れられない。
あれは結婚してヴェネツィアに住み始め、まだまもないころだった。夫の両親から、復活祭にバッサーノに行こう、そして白アスパラガスを食べようと誘われた。
クリスマス休暇をいっしょに過ごしたばかりだから、復活祭は夫婦だけで過ごしたい。「復活祭は好きなひとと」というぐらいだし…と思いつつ、なぜまた夫の両親と休暇を過ごすことに同意したのか。
記憶はさだかでないが、白アスパラガスというのが大きかった。白アスパラガスといえば、日本では缶入りのものか、レストランで生から調理したものに与れたときでも、せいぜい数本しか食べたことがない。産地に行くなら思う存分食べてみたいと思ったのだ。
初めて訪れたバッサーノは、風光明媚な町だった。ヴェネツィアから車で一時間ちょっと。青い山並みを背景に、町の中心を川が流れ、その上に中世風の、屋根付きの木の橋がかかっている。バッサーノはこの橋と絵のような街並み、そしてぶどうの皮からとった蒸留酒のグラッパの産地として知られている。
ひと通り、観光などして、さあ、白アスパラガスだ。
連れていってもらったのは、白アスパラガスを看板にしている、愛らしい見かけのレストラン。店内も家庭的でいい感じ。いそいそと席につく。
しばらくして、白アスパラガスを茹でたものの山盛りが出てきたときは目を見張った。四人で分けるのかと思ったら、一人分だった。二十本ぐらい乗ってたんじゃないか。同時にゆで卵が乗った皿も運ばれてくる。一人分として六つぐらいはあった気がする。
それにしてもこんな素材を茹でたものだけドーンと持ってこられて、ちょっと面食らった。どうやって食べるのかと思ったら、それがまた素っ気ないほどシンプルだ。
白アスパラガスを数本、ゆで卵を数個、それぞれ皿にとる。まず、ゆで卵をナイフとフォークでつぶす。それにオリーブオイルとヴィネガー、塩胡椒で好きに味付けし、アスパラガスといっしょに食べるのだ。料理、ともいえない料理。春の味覚の、その、まさに素材そのものを味わう食べ方である。
それがまたうまい。とれたての白アスパラガスの、淡い上品なほろ苦さと、ゆで卵をつぶしてその場で作るマヨネーズ状のものが、なんとも相性がよくておいしいのである。
とはいえ、こんな同じものばかり、いくらも食べられないと思うでしょう?それがふしぎ、白ワインがお供なせいか、どんどん行ける。
お皿のアスパラとゆで卵が少なくなってくると、わんこそばみたいに、お店の人が次々とおかわりを持ってくる。それで調子に乗って、また食べちゃう。アスパラガスを30本、卵を10個は食べたんじゃないか。夫や義父はもっと食べただろう。食べ過ぎて、帰りの車ではもうだれも口を聞かなかった。
「復活祭は好きなひとと」のはずだったのに……。帰宅して胃薬を飲み、つぶやいた。夫婦ふたりきりで過ごせる休みのはずだったのが、白アスパラガスの誘惑に負け、またしても夫の両親といっしょの休みになってしまった。
おかしくもなつかしい、そんな春の日の思い出だ。
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