イタリア人的考え方

イタリア語 敬語とタメ口、leiとtuの使い分け

イタリア語 敬語とタメ口

 

イタリア語を学び始めてもう20年超になりますが、今でも戸惑うことがあるのが敬語(敬称)とタメ口(親称)の使い分け。

イタリア語には相手をlei(あなた)と呼ぶ、「です・ます」調のていねいな話し方と、tu(きみ)と呼ぶカジュアルな口調の二つがあります。

leiは改まった話し方、フォーマルな場に。tuは親しい話し方、カジュアルな場で。

一般的に、lei(あなた)を使うのは初対面の人、親しくない人、かしこまった関係、目上の人。フォーマルな場。

一方、tu(きみ)を使うのは家族や友達など親しい人、若者同士、形式張らない関係。カジュアルな場。

とはいえ、現実はもっと複雑で、ケースバイケースです。

初対面でも最初からtuを使って話しかけてくる人もいれば、何年もいっしょに仕事しているのにleiを使い続ける人もいる。片方は敬語を使っているのに、相手はタメ口だったり…

使い分けが多様になるのは、年齢や生まれ育ち、職業、上下関係、ジェネレーションといったさまざまな要因もあるし、その人が相手と親しくなりたいと思っているのか、距離を置きたいと考えているのかにもよります。相手のスタンスを見ながら、leiを使うのが適切なのかtuがいいのか判断しなきゃならない。

日本語にも敬語とタメ口があり、感覚的にわかりづらくはないものの、微妙に文化的な差異があります。

leiとtu 実際の使い分けはケースバイケース

イタリアで暮らし始めた頃はleiを使うべきかtuを使うべきかがよくわからず、困ったものでした。

例えば、語学学校の先生はtuを使って親しい口調で話しかけてくれるけど、生徒の自分もtuで返していいのか、それとも相手は先生なんだからleiを使うべきなのか。

また、カフェで友達に紹介された女性が年上だったので、leiを使ったら、「私のことそんな年寄りだと思ってんの?」って気を悪くされた…( ̄ー ̄;

あれから苦節○十年、イタリアで様々な人間関係を経験してきた今のわたしなら、前述の疑問に次のように答えますかね。

●先生と生徒は上下関係なので、leiを使うのが普通です。ただ、語学学校のような、言葉に親しませるためにあえてカジュアルでフレンドリーな雰囲気を取り入れている場所であれば、先生にtuを使うほうがむしろ自然なケースもあるでしょう。

●イタリアでは少しぐらいの年の差はないも同然。若者同士であれば、最初からカジュアルな言葉遣いをするのが普通です。

また、率直に「possiamo dare del tu?(tuで話しませんか?タメ口で話しませんか?)」と聞いてみる手もあります。ただ、「ダメです」とは答えにくい質問なので、相手の感触をよく確認してからにしましょう(;^ω^)

leiとtuの使い分けでこちらの意思を伝える

さて、このように、初対面でもtuを使ってカジュアルに会話を始めることも多いのですが、反対に、相手がtuで話しかけてきても断ることもあります。やたら他人に馴れ馴れしくさせない、上下関係をはっきりさせる、といったことが必要な場合等です。

実例でご紹介しますね。

イタリアで通訳をしていたとき、時々いっしょに仕事をするベテラン観光ガイドのセルジョさんというおじさまがいました。

そのセルジョさんに、新参の若者のガイドがいきなりtuで話しかけてきたのです。

するとセルジョさんは、

「tuじゃなくleiでお願いします。わたしはまだあなたとパスタも食べていない仲なんですよ」

と、やんわりとたしなめたのでした。

なんだ、きみ、一緒に飯も食ったこともないのに、いやに馴れ馴れしいじゃないか、といったところでしょうか。

日本ほど形式張ってはいないものの、イタリアにも年上年下、ベテラン・新参者、目上・目下といった上下関係はあります。

新参若者ガイドは「観光ガイドという同じ国家資格を持った仕事仲間同士」という感覚でセルジョさんに話しかけたのでしょうが、セルジョさんにしてみたら、

「昨日生まれた若造に、タメ口で話しかけられるのは不愉快」ということだったのだと思います。

人にもよりますが、イタリア人は開けっぴろげに見えて形式を重んじる、フォーマルな人たちでもあるのですよね。

最後に、「相手との適切な距離」なんてもんをぶっ飛ばした例をご紹介して終わりにします。

知り合いに美奈ちゃんという女性がいるのですが、美奈ちゃんはイタリア旅行中、駅の窓口で切符を買おうとして、駅員の男に突然「Quanto sei carina! (きみってなんて可愛いんだ!)とナンパされました。

二人は一目惚れで、その後結婚して幸せに暮らしているからいいのですが、これが好みのタイプでもなんでもなかった場合、どうするか。

まあ、ナンパなら無視すればいいのですが、そうじゃなくて、駅、銀行、レストランなどで馴れ馴れしく話しかけられて不愉快な場合、ナメられなくない場合、セルジョさんに習って、

「tuじゃなくleiでお願いします。Per favore dia del lei」

と言ってみるのもいいでしょう。この一言で相手との間に結界を引くわけです。

とはいっても、そもそもが馴れ馴れしい相手では、こんな正攻法では通じないかもしれませんが…(;´д`)=

というわけで、本日は「イタリア語 敬語とタメ口、leiとtuの使い分け」についてでした。人間関係と言葉って、本当に複雑ですね。

ではまた。See you! A presto!

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トリリンガル・マム
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