イタリア人的考え方

日本のコロナいじめは異常。感染者に批判や差別はしないイタリア

 

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コロナ感染で自殺者が出る「自粛警察」の日本

新型コロナウイルスに感染した女性が自宅療養中に自殺とのニュースを耳にした。「自分のせいでまわりに迷惑をかけた」という内容の遺書を残して亡くなったのだそうだ。小学生のお子さんも陽性と判明したため、お子さんが学校でほかの生徒に広めてしまうかもしれない、お子さんの居場所がなくなるかもしれないと心配していたという。病気への恐れ以上に、感染者への批判や差別、中傷への恐怖が女性の貴い生命を奪ったような印象を受け、痛ましさに言葉を失った。

感染者を差別や批判しないイタリア

私が長く暮らしたイタリアでは昨年年頭、世界に先駆けて新型コロナウィルスの感染爆発が起き、日本とは桁違いの死者を出した。けれども、感染した人が責められたり、医療従事者が差別を受けるといった話は聞かない。イタリアの友人・知人の話を聞いても、「感染して気の毒だ」とか、「治ってよかった」という反応が多いようだ。昨年5月21日の朝日新聞の記事でも、イタリアで「第一号患者」となった男性が確認されたときも、訪問先や男性の勤務先が差別や中傷を受けることはなかったと報じている。まして、感染者がまわりに迷惑をかけたと自ら生命を断つようなことはイタリアでは考えられない。

朝日新聞の記事はこちら→「コロナ追悼、分け隔てなく 市民も実名、感染者差別せぬ国民意識 イタリア紙」https://www.asahi.com/articles/DA3S14483649.html

「まわりに迷惑をかけてはいけない」という呪縛

自殺した女性はコロナの不安やストレスで通常の精神状態ではなかったのかもしれない。それでも、「まわりに迷惑をかけてはいけない」という倫理観、社会的刷り込みがなければ、こんな悲劇には至らなかったのではないか。「自粛警察」などに見られるように、この刷り込みは今や強迫観念となって私たち日本人の人生を脅かしているようだ。

私自身はもういいかげん、「まわりに迷惑をかけてはいけない」という呪縛から解放されたいと強く願っている。というのも、長年それによって窮屈な思いをしてきたから。特に、海外での暮らしや欧米の人たちと仕事するなかで強くそれを感じた。なにをするにも自己検閲が働き、切実なニーズやリクエストがあってもなかなか気楽に口に出せない。言いたいことがあっても、「これは私のわがままではなかろうか。まわりに迷惑をかけるのではないか」などと逡巡してしまう。そんなことに躊躇しないアメリカ人やイタリア人の知人、同僚たちに、大事な機会において一歩出遅れたり、損したりもした。グローバル化した社会で、日本のこの倫理観はもう私たちの生活にそぐわない。そう思うことが多い。

迷惑には効用もある

そもそも、「まわり」って誰だ?周囲の人を大事にし、敬意を払うことは大事だけど、万人に対し気を使っていたら生きていけない。「まわり」も大事だけど、自分はもっと大事だ。自分を確実に大事にしてあげられるのは自分だけなのだから。

それに、人に迷惑をかけるのは悪いことばかりでもない。人に迷惑をかけたことがきっかけで、その人と親しくなるということはよくある。たとえば、酔っ払ってバカをやったのに「しかたないな」って笑ってゆるしてもらえたときなど、自分が欠点まるごと受け入れられたと感じ、その人にぐっと気持ちが引き寄せられる。そういう経験を踏むと、今度は人から多少、迷惑をかけられてもそんなに気にならなかったりする。

Gerd AltmannによるPixabayからの画像

異文化の価値観を知ることで、自分をしばるものから少し自由に、楽になれる

とはいえ、文化的な刷り込みというのは根深い。私もまわりを気にしないようにしようと常日頃から自分に言い聞かせているにもかかわらず、つい、まちがったことを言って批判されたらどうしよう、迷惑をかけたらどうしようと思ってしまう。ただ、私の場合は欧米人との仕事で自分とはちがうものの見方、考え方に触れる機会が多いので、衝突も多いが、救われることもまた多い。価値観や倫理観の多様性を知ることで、自分をしばるものから少しだけ解放される、という感じかな?日本で当然とされていることが、他の国ではまったくちがうふうに受け止められると知ることで、新しい視点が得られる。こう着状態にひとつ、風穴が開く。息苦しさが少しだけましになる。

コロナ感染で批判や差別をするのは他国では異常。気にしないで!

だから今、コロナ感染でいわれもなき批判や中傷を受け、苦しんでいる人たちに伝えたい。場所を変えれば、たとえばイタリアでは、感染した人はあいにく感染してしまった。それだけのこと。無責任な行動をとってきたのでなければ、その行動が批判されたり、家族が差別を受けたり、中傷されたりすることはまずない。病人としてケアされるだけだ。

アメリカでも知人の親戚二人が感染して自宅療養と隔離をしているが、FBには笑顔で窓越しに手を振る写真が普通に掲載されていた。まわりの人の反応も「早く治るといいね」って感じでごく普通に温かかった。たとえ日本で心ないことを言われても、そんな偏狭な考えがすべてでないこと、むしろ異常なことを知って、元気を出してほしい。

最後に、亡くなられた女性のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

メイン画像はHelena Jankovičová KováčováによるPixabayからの画像 です。Thank you!

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ABOUT ME
湊夏子
長いイタリア暮らしを経て、帰国。日英伊の3か国語でメシの種を稼ぎ、子どもを育てているシングルマム。
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