イタリア人的考え方

赤の下着でハッピーニューイヤー

 

師走のイタリアでウインドーショッピングをしていると、やたら赤い下着が目につく。

女性用の優美なレースやシルクのキャミソールから、若者向けのカジュアルでスポーティーなもの。「なるべく早めにお召し上がりください」といったジョークが書かれたユーモアパンツなど、種類もさまざま。

 

イタリアでは、赤い下着をつけて新年を迎えると縁起がいい、と言われている。それで恋人同士や親しい友人、家族の間で、クリスマスプレゼントによく贈ったりする。

でも、なぜ赤い下着?「さあ、なんでかな?昔からそうだから」まわりのイタリア人に聞いても、そんな答えしか返ってこない。調べてみると、中国由来説と古代ローマ由来説のふたつがあった。

中国では古代から、赤は悪霊を祓う色とされている。特にNianという、人間を喰うおそろしい悪霊を追い払うと考えられており、そこから、新年を迎える前に悪霊、悪運を追っ払おうということで祭事などに使われていたという。

一方、古代ローマでは、赤は力の象徴。オクタウィアヌス・アウグストゥスの時代から、年始の祭事には赤い祭服が使われていたとか。それが、健康、豊穣のシンボルとして今日に続いているとの説だ。

ちなみにこの赤い下着、去年のを使いまわすのはダメ。新品でなければご利益がないそうだ。また、一度着用したらそれっきり、捨ててしまわなければならないという説もある。古いことは水に流し、新しく始めようということなのだそうだ。

ほかにも、パンツやショーツは大晦日に表裏を逆に履き、元旦に裏返して正しく履くという説も。これは、ものごとがしかるべく順調に進むように、ということらしい。まあ、どこまでやるかは人による。

さて、縁起担ぎの赤い下着を身につけたら、大晦日の夜はcenone(大晩餐)とパーティーだ。クリスマスとちがって、大晦日には宗教的な色合いはない。家族や友人たちとたらふく食べ、飲み、おしゃべりして過ごす。レンズ豆の煮込み、コテキーノと呼ばれる豚のソフトソーセージが定番料理。レンズ豆はコインに似ていることから、お金が貯まるように、と言われている。

盛り上がってきたところで街にくり出せば、カウントダウン間近の広場や通りは、集まってきた人々で大変なにぎわいだ。新年を迎えると同時に、花火が炸裂。持参のスプマンテのボトルがあちこちで開き、人々はおめでとうのキスをかわす。コロナで外出制限の年もあったが、今年はそんな大晦日が帰ってきそう。

このように、陽気にさわいで過ごすのがイタリアの年越し。でも、新年の幸運を祈る気持ちは日本と変わらない。この夜、たくさんの老若男女が、縁起かつぎに幸福の赤い下着を身につける。来たる新年、どうかいいことがいっぱいありますように、と。

 

注)この記事はJALカード会員誌アゴラ2006年12月号に掲載されたものを書き直したものです。

 

★最後までありがとうございました。ブログランキングに参加しています。よかったら応援クリックしていただけるとうれしいです。
にほんブログ村 外国語ブログ イタリア語へ
にほんブログ村

ABOUT ME
湊夏子
長いイタリア暮らしを経て、帰国。日英伊の3か国語でメシの種を稼ぎ、子どもを育てているシングルマム。
こちらの記事もおすすめ!